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白い華、雪の歌

2024.12.30

( Nordic Journal )




雪を花にたとえた歌があります。


冬ながら 空より花の 散りくるは
雲のあなたは 春にやあるらむ

古今和歌集, 清原深養父




冬だというのに空から花が散ってくる。
雲の彼方はもう春なのだろうか。

と、降りゆく雪を純粋なまなざしで捉えた古今和歌集の名歌ひとつです。1000年も昔のこと、とおい過去から届いた雪の歌です。





雪はしだいに溶けて消えてしまうけれど、雪がもたらす感情は言葉として永遠にとどめておくことができる。永遠なんてありえないのかもしれないけれど、永遠を祈って詠まれた歌は、美しいと思う。


天から舞い散る、白い華。
雪が歌う、雪が踊る、冬の空の下。










あらゆる世界を、あらゆる意味を、あらゆる感情を、たった50ほどの記号の組み合わせで表現しているなんて不思議ですよね。

「雪 / ゆき」と「夢 / ゆめ」も、
「朝 / あさ」と「明日 / あす」も、
言葉のなかでは紙一重の関係性で存在しているなんて。





雪を、手紙にたとえた人がいました。

人工雪の研究で知られる、科学者の中谷宇吉郎です。私たちのコラムでも度々引用しているのですが、彼は「雪は天から送られた手紙である」という美しい言葉を残しています。


北海道大学の敷地内にある記念碑
北海道大学総合博物館(旧理学部)



その言葉はひとつの詩として詠まれたわけではなく、長年の雪の研究の積み重ねの末に“生まれた”言葉です。彼は、自然界の雪の結晶にひそむ法則を見つけたことで、それを生み出した空や環境のことまでも分かるようになった。つまり、雪という言葉を介して空と会話ができることに気がついたのです。



中谷宇吉郎雪の科学館の展示より



世界に現れてくるものと、消えゆくもの。
刹那的な時間、儚い現実、科学が解き明かした自然の秘密。



中谷宇吉郎雪の科学館の展示より



科学が教えてくれる雪の美しさは文学がもたらすそれとは少し違っていますが、依然として、雪は言葉として / 言葉のように、人の心に残り続けるのです。















私たちの名前 “lumikka”は、フィンランド語で雪を意味するlumiと、華を意味するkukkaを組み合わせた造語です。雪華、つまり雪の結晶とは見ようとしなければ目に見えず、触れると消えてしまう儚い存在。そのような儚き美しさを日常から発見すること、そして他者へと共有してゆくことを私たちは活動の礎としました。

これまで、私たちは1000を超えるフィンランドの古きモノに出会い、写真におさめ、言葉を添えて新しい居場所へ送り届けてきましたが、それは果たしてどのような意味を持ち得るのでしょうか。









時間の流れには、逆らえない。

人も、モノも、結局いつかは消えてしまうのでしょうが、その儚さを憂いるだけでなく、儚さの中にひそむ小さな美しさを見つけ出して、人の心のなかに残しておきたいと思うのです。








永遠はなくとも、永遠を祈ることはできるのだから。












白い華、雪の歌

( Nordic Journal )

2024.12.30

Text & Photography : lumikka