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砂とガラス
2025.10.04
( Nordic Journal )
手のひらから、さらさらとこぼれ落ちる砂のように。かつての思い出も、きれいと思えた空の色もやがて消えてゆく。像はあえなく霞んで粒となり、からっぽな宙をただよっている。
その手のひらに残されたものを、見つめている。







“今ここに在る”という現実は、砂のなかで輝く光のようだ。その光を、この現実を、心の中にとどめておきたいと願ってやまない。こぼれ落ちてしまったたくさんの砂の粒を、わたしは知っているから。






砂とガラスの関係性を思うとき、そこに宇宙を見る。
遠くの場所から運ばれてきた砂が熱されて、冷やされて、ガラスになって。すごく小さいものが、奇跡のような出来事の連なりによってある形を描いている。繊細でありながらも壮大なそのプロセスは、ガラスも、宇宙も、おなじだと思う。

砂とガラス、星と宇宙、わたしとあなたの境界線。
「人間も、星屑からできている」という言葉はどこか実態を欠いていて空虚さすら感じるけれど、その言葉が存在しているからこそ、わたしは夜空の星を今日もまた綺麗だと思える。人へと続いたかつての星屑と、星へ導かれた別の星屑の運命に想いを巡らせながら。

いま、この瞬間にもどこか遠くの知らない街では知らない誰かがうつくしい日常を送っていて、宇宙が生まれた確率と同じくらい運命的な出来事が、現れては人知れずに消えてゆく。
重なることのない風景が、交わることのない人生がこの世界にはたくさんあるけれど、きっとそのどこかに、わたしにならなかったほうの星屑がいる。
どうかその日常に光あれ。

地球がまわる
同じ地平に立っている
星が流れる
だれかの祈りが
夜の空を漂っている
砂とガラス
( Nordic Journal )
2025.10.04
Text & Photography : lumikka