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夜間飛行
2025.10.25
( Nordic Journal )
北へと向かう、白い翼。
星空の下、眠る街の上。
東京から、北極経由、ヘルシンキ行き。
夢現の夜間飛行。

5月の東京、雨の夜。
夜から始まる旅は静かで好きだ。窓を染める大きな闇が、陸を離れる不安や旅への高揚を鎮めてくれて、日常は、闇夜の中でなめらかに旅へと移り変わってゆく。

濡れた窓から溢れる光はカメラを通って眼に映る。いくつものガラスの膜が、風景を静かに分解してゆく。

昼夜を隔てる境界線。
夜の終わりを追いかけて。


遠ざかる街の光、星屑のように瞬く光。
夜に沈む海は暗く、深く。のみ込まれてしまいそうなほどに。

たしかな時間も空間も失われた孤独の空で、小さな光がその存在を知らせている。止まることなく、届くこともなく。


それでも、北へ向かって進んでゆく。



青い光。
北極海。
北の果て。


窓の外には、白い夜が広がっていた。そのときいったい何時だったのか定かではないけれど、夏へ近づく極地の空は、白く、明るく、澄んだ輝きを放っていた。

緯度の存在しない北極点では、標準時間が定義されないという。場所も、時間も、無限に続いているかのような不思議な世界。その美しい青は、地球が水の惑星であることを知らせてくれる。



しばらくして目が覚めると、空は不透明に近づいていて、眼下には陸が、森と湖が見えてくる。



夜が終わり、旅が始まる。
新しい場所、新しい1日へ。
「機体のしたに連なる丘陵が、夕暮の金色の光のなかで、ようやくその陰影を深めつつあった。平野は輝きはじめていた。しかも衰えを知らぬ輝きによって。この地方では、平野はいつまでも金色の光を残す。冬がすぎ去ったあと、いつまでも雪を残すのとおなじように」
『夜間飛行』 サン=テグジュペリ
夜間飛行
( Nordic Journal )
2025.10.25
Text & Photography : lumikka