journal
夜の空の孤独
2025.05.25
( Nordic Journal )


遠くの空に浮かぶ雲は、紙に染み込んだ白い水彩絵の具のようにのっぺりとしていて薄く小さく目に映る。ひとたび空の上から眺めてみれば、それがとてつもなく大きくて、適切な深さを持っていると知っているのに。えんぴつの線みたいなひこうき雲も、本当は太くてずっしりとしているんだろうなって。近くで見たことはないけれど、なんとなくわかる。

地上から空を見上げることも飛行機の窓から街を眺めることも、等しく好きだ。でも、空から眺める夜の街はすこしだけ特別だと思う。

ぽつりぽつりと瞬く小さな光の粒。そのひとつひとつは言葉にならないささやきのようで、どこか儚い。ここがどこの国の上で、ここで時計が何時を指しているのかすらわからないけれど、窓の下に広がる街には確かに人が、人びとが生きていて、それぞれの生活が絶え間なく続いている。こうしている間にも、いくつものかけがえのない人生が描かれ続けている。





見慣れない街の構造と、見慣れない色の街灯の光。この光の下に暮らす人びとの生活はどの方向から思考を重ねてもまったく想像ができない。あまりに遠すぎるのだと思うし、あらゆる情報が決定的に欠けているのだとも思う。それはまるで感度が不足しているフィルム写真みたいだ。
知らない街という無限の広がりを持った存在と、飛行機の窓を覗き込む小さな存在。その極端なまでもの対比が、或いは、そのAとBの間にある大きな距離が、人間の心の奥底にある寂しさや孤独の感情を呼び覚ます。


知らない街の知らない人びとの夜の上をすすんでゆく。そこに街があって、人びとがいて、生活があって、人生がある。そのたしかな事実が、からっぽな夜の中をただようわたしの孤独を紛らわせてくれる。
届きそうで届くことのない遠くの街への想像を巡らせながら、夜の終わりへ向かってゆく。
・
・
・
わたしにはわたしの街が待っているから。
新しい朝が、やってくるから。
夜の空の孤独
( Nordic Journal )
2025.05.25
Text & Photography : lumikka